意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

ラジワは、
自分が「恵まれている」ことを
よく理解していた。

帝国の皇女として生まれ、
聡明で、美しく、健康で、
そして――まだ、誰の妻でもない。

長い回廊を歩きながら、
彼女はふと、窓の外に目をやった。
春の光が白い石壁に反射し、
宮廷は穏やかな輝きに包まれている。

(今日も、何事もない)
その事実に、
ラジワは胸を撫で下ろすような、
それでいてどこか落ち着かない感情を覚えた。

長姉ファティマは、
数多いる皇帝の子どもたちの中で
ただ一人特別だった。

幼い頃から聡く、言葉に力があり、
皇帝である父からも一目置かれていた。
外交の席に同席する姿を、
ラジワは幾度となく遠くから眺めてきた。
――尊敬している。
それは紛れもない本心だ。

だが同時に、
「選ばれる姉」と「見送る妹」という立場の違いを、
ラジワは痛いほど理解してもいた。

(お姉様は、ああやって世界に出ていく人)
自分は違う。
そう思いたかった。