【完結】妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

「エーヴァ」

 あの日から私の名前を呼ぶアダン様の声色は優しい。そしていつも愛おしい者を見るような、そんな慈しみの視線を向けてくれる。今日もアダン様と仕事終わりにお茶を嗜んでいた。
 ふと、私は胸に違和感を覚える。正確に言うと、最初に彼が贈ってくれた首飾りに、だ。

「どうした?」
「いえ、いただいた首飾りが少し……」

 そうアダン様に返事をした私は、首飾りを外してテーブルへと静かに置いた。すると、宝石(ベリル)にヒビが入っているではないか。慌てた私が再度首飾りの宝石に触れようとしたところ、パリン、と小さな音を立てて……それがふたつに割れてしまった。

「アダン様からいただいた物が……申し訳ございません……」

 彼の瞳と同じ美しい水色のベリル。目の端でアダン様が目の端で何かを考えているような姿が見てとれた。けれども私はその残骸が目の前にあるという、衝撃な光景に唖然としていた。しばらくして、アダン様は言葉を失っている私に話しかけてくる。

「これは以前、私が宝石に魔術を込めたのだが……その魔術をあの三人が来た時に、使っただろう?」
「もしかして、元公爵を弾いたあの魔術でしょうか……?」
「ああ、それだ。魔術を使用したことで、宝石が保たなかったのだろうな……簡易ではあったが、エーヴァを守れて良かったと思う」

 私はその話を聞いて、目の前のベリルに感謝を告げた。
 ……あの魔術がなければ、今ここに私はいないだろうから。

 アダン様は近くにいたイルゼさんを呼ぶ。

「エーヴァが怪我をすると危ない。あれを処分してもらえないだろうか――」
「アダン様、それは嫌です」
「しかし、欠片で怪我をしたら危ないだろう?」

 困惑しながら話すアダン様。きっと私の意図が掴めないのだろう。
 私は理由を説明しようと、彼へと視線を向けるが……直視することができず、すぐに逸らしてしまう。けれども、私が何故このベリルを残しておきたいのか、がきちんと伝わるようにポツポツと言葉を紡いでいく。

「それはそうなのですが……だって、アダン様に初めて贈っていただいた……私を守ってくれたベリルですから、割れても側に置いておきたいのです」