【完結】妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 小さな声で元公爵が宰相の言葉を繰り返す。
 まるで信じられないと言わんばかりに目を見開いている。それは元夫人とリリスも同様だった。

「そうだな。我が国にはもうこのような愚行を犯すものはいない、と疑いの余地はないが……手綱を締めるには良い機会であろうな」
「ご尤もでございます」

 恭順の意を示す宰相たち。
 陛下は臣下の後頭部を一通り確認した後……眼前にいる三人の姿を視界に入れる。

「お前たちの罪状は……国家反逆罪と謀反罪、そして……神託を汚した冒涜の罪か」
「再度お伝えしますが、既にグレイザント公爵家は()()()()()()となっておりますので、あなた方は現在、()()でございます」
「「へい……みん……ですって?」」

 宰相の二度目の言葉に、夫人とリリスは少しづつ現実を呑み込んでいく。
 
「ええ、国家反逆罪を犯した者たちを、貴族籍に置けると思います? 無理でしょう?」

 無情にも宰相の言葉は、渦を巻いて二人の頭の中に響き渡る。

「どうして……どうして? 入れ替えただけじゃない……」

 夫人の言葉を聞いた宰相は眉間に皺を寄せた。そして眼鏡の位置を静かに直してから、つぶやいた。

「それが『国家反逆罪』であり、『謀反罪』であり、『神託に背く行為』であることすら理解できないとは……呆れて物が言えませんね」
「言う必要はなかろう。此奴らに必要なのは、『罪を犯したことによる罰』のみだ」
「……仰る通りでございますね」

 そう呟いた宰相は、一瞬憐憫の視線を三人に送る。
 しかしすぐにその瞳からも、顔からも表情が消え……先ほどよりも数段低く冷酷な声で言い渡す。

「妥当なのは数日間の磔の後、斬首刑でしょう」
「ざん……しゅ……けい?」

 王国で一番重く、通常貴族には施行されることのない刑罰。
 三人も名前だけは聞いたことがあるような、実際にはあり得ないと言われている刑罰。

 数日間の磔では石を投げることも許可されている。
 飲まず食わずで晒し者にされた後、最後は斧で――

 そんな絶望的な未来が目の前に突きつけられた三人は、目を剥いて気絶する。
 次に彼らが目を覚したのは……平民の犯罪者が入れられる、石造りの檻の中であった。