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この季節の保健室は、なんだかいつもと違って見えた。
消毒液の匂いが、いつも以上に鼻の奥にツンと突き刺さる。
真っ白な空間に、擦りむいた膝の赤が、ぽつりと浮かび上がる。
…おかしい、こんなはずじゃなかった。
「結構すりむいちゃったわね」
椅子に座る先生が、私の前にしゃがんで、ピンセットで掴んだガーゼをぽんぽんと優しくあてる。
少し染みるくらいで、痛くはない。
でも、体育の授業でよそ見してたせいで、足元のサッカーボールに気づかずに転んでしまったなんて――恥ずかしすぎる。
「受験生は、体も大事にしないとね」
「…はぁい」
この夏が勝負だって、何度も言われてきたけれど、確かに少し、気が抜けていたかもしれない。
「なーに?好きな子でも見てたの?」
思わず顔をそむける。
「…はは、」
「あら、冗談のつもりだったのに、顔、真っ赤ね」
胸の奥が、くすぐられるみたいに熱くなる。



