女子の試合も始まって、私は声を出しているふりをする。
視線だけが、ネットの向こうをすり抜けていく。
コンクリートの階段。
そこに、もう出番を終えたらしい晴海がいて、白い光をまとったみたいに、友達と笑っていた。
「青春ですなー」
ひじでつついてくる緑に、少し恥ずかしくなりながらも、私は何でもない顔で笑う。
「いいよねえ、男子は」
軽く言ったはずの言葉が、風に乗って、自分の耳に返ってくる。
「私もさ、晴海とあんなふうに喋れたらいいな」
冗談みたいに言えたらいいのに。笑い合えるだけの距離。
何も始まらなくていいから、ただ、声が届くところにいたい。
晴海の笑い声を、今より少しだけ近くで聞いてみたい。
「晴海はライバル多いからね~」
「ほんと、目立つよね~」
焦りなんて、きっとまだ知らない。
あの人が、かっこいい男の子だってこと。
夏の空みたいに、当たり前の事実として、世界中に広まればいい。



