パチン、パチンとホッチキスをならして、開けた窓からの風を感じて、夏を感じる。
夏が、すき。
遠くで鳴く蝉の声。
揺れる風鈴。
海のざわめき。
すり抜けていく風。
グラスの中で、氷が触れ合う音。
どれも嫌いじゃない。
でも——
「あれ、まだ残ってんの?」
その声が、全部を追い越した。
顔を上げると、扉のところに晴海が立っている。
なんでいるの?と言いたげな目に、「雑用させられてるの」と聞かれてもないのに答える。
晴海のほうこそ、もう帰ったんじゃなかったの。
そう聞けたらよかったのに、言葉は喉の奥で止まったままだった。
晴海今まで、放課後の学校に残って勉強なんてしたことなかったはずだし。
この時間までここにいる理由なんて、たぶん——ひとつしかない。
それを口に出すのは、少しだけ怖かった。



