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放課後の教室は、いつもより広く感じた。
日直でもないのに、隣に目を奪われていた、それだけの理由で私は残されたらしい。明日配るという生物のプリント。そのためだけに、ひとり。
理不尽だ、と心の奥で声が上がる。
でも、よそ見していたのは事実で、もうひとつの声がそれをなだめる。
頭の中で天使と悪魔が交互に現れては消えて、結論はどこにも辿り着かない。
パチン。
パチン。
ホッチキスの音が、静かな教室に小さく跳ねる。誰かの気配がないぶん、その音だけがやけに生き生きして聞こえた。
今日は、たまたま。
本当にたまたま、私だけがここに残る日だったみたいだ。いつもなら、どこかの席で誰かが教科書を開いているのに。
時計はもう五時半を過ぎている。
それでも、窓の外はまだ明るくて、校舎の影がゆっくり伸びていくだけだった。
夏は、日が長い。簡単には眠らせてくれない。
でも、その感じが嫌じゃなかった。
夜になると、部屋の窓をあけて椅子に座り、空を見上げる。
それが、私の日課だった。
星を眺めていると、自分がとても小さな存在に思えてくる。
広い空の奥で、何も言わずに光っているあの点たち。
静かなのに、確かにそこにあって、消えない。



