晴海が、やっぱりおかしい。
午後一番の授業なのに、板書を写す気配もなければ、机に突っ伏す様子もない。
黒板を見ないで、頬杖をついて、ただ窓の外を眺めている。
夏の光が、ガラス越しに揺れている。
その向こうに、何を見ているのかは、分からない。
晴海。
どうしたの。
私も私で、まったく集中できなくて。
晴海がそんなだから、視線は何度も、あの横顔へ戻ってしまう。
気づけば、名前を呼ばれていた。
「おーい、夏井。聞いてんのかー」
「えっ……あ、はいっ」
教室に、くすっと小さな笑いが広がる。
恥ずかしい。
耳まで熱くなっていくのが分かる。
……全部、晴海のせいにしとこう。
うつむいたままでいると、隣からクスクスと笑い声がした。
誰のせいだと思ってるの。
「……笑わないでよ」
そう言うと、
「珍しいなって思って」
小さく、晴海が笑う。
——あなたのことを、見てただけですよ。
もちろん、そんなこと言えない。
その笑顔には、さっきまでまとわりついていた影は、もうなかった。
それを見て、胸の奥がほどける。
ほっとして。
でも、同時に、また不安になった。



