晴海の世界は、きっと賑やかだ。
人の声で満ちて、笑顔が重なって、光が跳ねている。
私の世界は、驚くほど小さい。
家族と、緑と、晴海。
それだけで、ほとんど全部。
たくさんの人に囲まれている晴海が、いい。
あの人が眩しい存在だってことは、もっと知られてほしい。
その気持ちは、最初からずっと、揺らいだことがない。
私は、ただ。
そのきらめきの端に、少し触れていられればいい。
「こんなやつも、いたな」
ふとした瞬間に、そんなふうに思い出してもらえるくらいでいい。
晴海に想いを告げる女の子たちと比べたら、私には、足りないものが多すぎる。
さっきの彼女の、スカートを握りしめる手が、かすかに震えていたのを知っている。
あの震えは、逃げたくなる気持ちと、進みたい気持ちがぶつかった証だ。
私はまだ、あそこに立てない。
同じ場所には、行けない。
正面で顔を見るだけで、胸が苦しくなる。
声を聞くだけで、体の奥が揺れてしまう。
この気持ちを、言葉にして差し出すなんて、到底できない。
だから、自然に。
できるだけ、自然に。
晴海の頬を撫でる、あの夏の風みたいに。
気づかれなくてもいいから、ただ、そっと、届いてほしい。



