青に溶ける、きみ。




女の子は、恥ずかしそうに頬を染めて、晴海を見上げていた。

スカートの端を、両手でぎゅっと握りしめている。その指先に、迷いと勇気が絡まっているのが分かる。



晴海は、そんな彼女に何かを告げて、歩き出す。
二人分の足音が、廊下の向こうへ遠ざかっていった。



正直、これが始まりじゃない。
球技大会のあの日から、というわけでもない。


何度も見てきた光景だ。
そのたびに、私は胸の奥で同じ言葉を繰り返す。


声にすれば壊れてしまいそうな、静かな祈り。



”お願い、晴海。その子だけの特別にならないで”



席に戻ると、緑が小さく首を傾げた。



「……いーの?」



たぶんそれは、ほかの子のところへ行っちゃっても?
そんな意味を含んでいる。


私は笑ってみせる。



「晴海はね、みんなの晴海だよ」

「ふーん」



緑は、それ以上踏み込まなかった。