*
*
*
昼休み。
お手洗いから戻る廊下の向こう、階段の壁から、手と顔だけをヒョコっと出して、笑いながら“おいで”と合図された。
なに?と不思議に思う気持ちと、嬉しくて恥ずかしくてくすぐったい気持ちが、胸の奥でごちゃまぜになる。
追いかける足取りは、自然に軽くなる。
隣に並ばず、背中をそっと追いかけて着いた先は、1階の外廊下にある自販機。
「なに、すき?」
「…オレンジジュース?」
「はは、なんで疑問形?」
躊躇なくピッとボタンを押す晴海。
落ちてきたペットボトルを、手渡される。
「えっ!いいよ!」
「せっかく買ったのに」
オレンジジュース。
「じゃあ、せめてお金払うよ!」
「いいって」
「だったら、私が晴海の買う!」
「俺、もう自分の買ったから」
左手にカルピスを持っている。せめて何かお返ししたいのに、軽く笑われただけで、終わってしまう。
晴海曰く、こういうのは“奢られとけばいい”らしい。
こういうのって、なんだ。
急に呼ばれたと思ったら、晴海に奢られるなんて。



