青に溶ける、きみ。




ページの端、ノートの余白。

意味のないふりをしながら、同じ文字を何度もなぞった。

夏が過ぎても、ふいに胸をあたためてくれるその並びが、なぜだか居心地よかった。



消えないでほしい、と願いながら、自分の手で消しゴムをかけた。

白く濁った跡だけが残って、それでも、消したはずの名前は、前よりくっきり胸に残った。




隣の席になってからはさすがに書けなくなって、心の中で呪文みたいに唱えた。



晴海の、名前が、すき。




口に出さなくても、文字を思い浮かべるだけで、キラキラした夏の断片が蘇る。

強い日差しと、白い雲と、雨上がりの匂い。

季節を閉じ込めたみたいなその名前が、すきだ。




外に出ると、もう雨はあがっていた。


きっと、私より先に帰った晴海の仕業だろうな、なんて思う。
根拠はないけれど、たぶん、そう。



私の夏で、兼、天気予報みたいな人。


雲の切れ間からこぼれる光が、少し眩しくて、私は傘を閉じたまま、空を見上げた。