青に溶ける、きみ。




少しの沈黙のあと、ぽつりと晴海が言った。



「夏井はどっちも似合うと思うけど、今の綺麗な髪を切るのは勿体ない気もする」




その一言で、思考が止まる。いや、心肺まで停止しそうで、息がうまくできない。



「大丈夫?聞こえてる?」



遠くで緑の声が聞こえるはずなのに、雨の音と、自分の胸の高鳴りのほうが大きくて、頭の中が真っ白になる。


濡れたまま、かきあげた髪。

普段は隠している眉とおでこが、雨粒とともにあらわになるその姿に、心が揺れる。



お願い、晴海――私のことを考えないで。

晴海の思考の中に私がいた、なんてこと、私に知らせないでほしい。



なにもかもが、キャパオーバーな私に、とどめを刺すように。



「ちゃんと拭かないと、風邪ひく」



そう言いながら、首にかけていた私のタオルで、前髪にそっと触れる晴海。

その指先の柔らかさに、胸がぎゅっとなる。



「晴海、晴海。あんた、やりすぎ。動かなくなっちゃったよ」

「あ、ごめん」



緑の声にハッとして、晴海が拭いてくれた前髪をササッと整えると、また、はは、と高く響く笑い声が聞こえる。