せっかくの体育なのに、球技大会の練習が始まって、まだ一日目だというのに。
「雨、降ってきそうじゃん。もう梅雨終わったと思ったのに」
「ねー、どんよりしてる」
緑が空を見上げたまま、「濡れたくないんだけどー」と大きくため息をつく。
……分かる。
私も、あんまり濡れたくはない。
重たい雲みたいに、気持ちも少し沈んだまま、倉庫からサッカーボールを取り出す。
ネットに入ったボールを抱えていると、後ろから男子たちの声がして、その中に、聞き慣れた声が混じった。
「それ、俺らやるよ」
ひょいっと、私の腕からボールの入ったネットが持ち上げられる。
顔を上げると、晴海だ。
「あ、ありがと」
それだけのやりとりなのに、さっきまでの湿った空気が、ほんの少しだけ軽くなる。
かっこいい。
「私ら、やることなくなったね」と緑がぽつりと呟いた。
倉庫から出ると、さっきより空が暗くなっていて、今にも落ちてきそうな雲が、校庭の上に広がっていた。
……これは、降る。
そんな予感が、肌にまとわりつく。



