ピリオド

コンコンコン。

控え室がノックされて、「失礼します」という一言と共にドアが開く。結婚相手の椿総司（つばきそうし）さんだった。彼もタキシードに着替え、ヘアセットも終わっている。

「総司くん！うちの娘をよろしくね」

「しっかり躾けてきちんとした嫁にしてやってくれ」

両親は笑いながら控え室を出て行く。結婚前の少し間、二人きりの時間を楽しむと思っているんだろう。

私は椿さんから目を逸らす。彼が私と結婚するのは、管理官であるお父さんとの繋がりを持つためだ。愛なんて椿さんも抱いていないに違いない。

「心春さん。とても綺麗です」

総司さんの言葉が耳を通り抜けていく。私は目を逸らしたまま、「ありがとうございます」と小さく呟いた。