バタフライ エフェクト

「教えてほしいんです。どうしたら元寄から連れ戻せることが出来るのか。そのために元寄のことや事件のことを知りたいんです」



林堂 香菜子は私達をベッドのそばに移動させた。

「声を張るとつらいから」と咳を交えて、林堂 香菜子は頼りなく弱々しい声で言った。



「何から話せばいいのかわからないけれど、元寄は確かに私と姉の葉子の家庭教師だった」

「はい」



林堂 香菜子によると、元寄は最初のうちは熱心に勉強を教えてくれて、人柄も教え方も穏やかな好青年のように思えたらしい。

ただ、次第(しだい)に、こう思ったそうだ。



「距離感というの? そういうのが近すぎるのよ」



葉子はまんざらでもない様子だったけれど、香菜子本人は嫌で仕方がなかった。

ある時、香菜子の髪の毛をふいに元寄が撫でたことがあるらしい。

気持ち悪さしかない香菜子は、元寄に注意した。



必要以上に近くに来るのはやめて。

私に触るのもやめて。

お父様に言いつけるわよ。



元寄はその場では謝ったけれど、それ以来香菜子に対する態度を変えた。