バタフライ エフェクト

「……」



テーブルの上に置いていた江原田さんの両手に、力がこもったことがわかった。

私はそれを、見逃さなかった。



「元寄 照良さんを、ご存知でしょうか?」

「……存じ上げませんね。年のせいかしらね、近頃の私ときたら、記憶があやふやになるんです」



(嘘だ)



何かを知っている、そんな顔をしている。

話せないか、話したくないか。



「江原田さんは、ここにおひとりでお住まいなんですか?」



梨々愛が話題を変えた。



「はい。離婚してからは、ずっと。……息子がひとりいるのですが、ずいぶん前に遠い所へ行ってしまって」

「そうだったんですね」

「心音さんが時々遊びに来て下さるので、寂しくはありません。ところで、心音さんは? 少し前から、登校なさっていないようですが」

「えっ?」

「登校なさる時には、必ずこの家の前を通っていらっしゃるので、庭に出て挨拶を交わしていたのです」

「……あ、えっと……」