晴れのち雨。運命の人に出会うでしょう

蘭は驚いて「オペラ座の怪人、知ってるの?」と大きめの声で言う。彰は恥ずかしそうに頭をかいた。

「俺、ミュージカルとか演劇とか見るの好きなんだ。いつかブロードウェイを生で見てみたいんだ」

「ふ、ふーん。そうなの」

彰の好きなものなど蘭は全く知らなかった。予想もしていなかった趣味に蘭の心が揺れる。蘭も演劇やミュージカルが好きなのだ。

「ブロードウェイ見たいって言うけど、どこにあるのか知ってるの?」

「もちろん!アメリカだろ!」

「ブロードウェイで日本語なんてないわよ。全部英語よ」

「アメリカなんだから当然だよね!」

この男、鈍感だ。蘭の中で苛立ちが生まれる。彼女は彰を指差して言った。

「あのね。英語わからないのに行ってどうするのよ。何言ってるのか理解できなきゃ100%楽しめないじゃない!!」

「た、確かに……!」

盲点だったと言わんばかりに彰が頷く。雨は変わらず止みそうにない。雨を見つめながら蘭は言った。

「……英語、雨が上がるまで教えてあげるわよ」

「ミス・タカナシ、センキュー!」

彰の映画に蘭はフッと笑う。そして「発音、ダメダメじゃない」と言った。

雨宿りをする中、二人きりの秘密の勉強会が始まる。