【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 窓の外では、五人の若者が肩を組み、涙を流し、それでも笑っていた。

 死地に向かおうとしているのに。

 三万の魔物が待っているというのに。

 それでも、あんなにも輝いている。

 ――若者たちの、純粋な決意。

 ――死を前にした、揺るぎない絆。

 ――そして、自分たちがいつの間にか捨ててしまった、魂の輝き。

 冒険者たちは、それを見せつけられていた。

 かつて、自分たちにもあったはずのもの。

 いつの間にか、失ってしまったもの。

 それが今、窓の外で眩しく輝いている。

 老冒険者が酒臭い息で呟いた。

「……俺にも、あんな時代があった」

 その声はまるで墓碑銘を読み上げるかのように、重く、悲しみに満ちている。

 若い頃は、恐怖など感じなかった。

 仲間と共に、不可能に挑むことが、何よりも楽しかった。

 でも、いつからだろう。

 ただ酒を飲む金を稼ぐことだけが目的になったのは。

 隣の男も酒臭い息を吐きながら頷いた。

「仲間と共に、不可能に挑んだ日々が……」

 その目は、遠い過去を見つめていた。

 かつての仲間たち。

 共に笑い、共に泣き、共に戦った日々。

 あの頃は、死ぬことなど怖くなかった。

 仲間と一緒なら、どこへでも行けると思っていた。

「いつから俺たちは、保身ばかり考えるようになった?」

 その問いかけに、誰も答えられなかった。

 沈黙が、罪悪感のように重く垂れ込める。

 窓の外では、五人が歩き始めていた。

 死地に続く城門へと向かって。

 その背中を見送る冒険者たちの瞳には、もう蔑みなどなかった。

 代わりに浮かぶのは、憐れみと、嫉妬と、そして――。

 魂の奥底から湧き上がる、本物の敬意。

 カツン。

 静かな音が、ギルドホールに響いた。

 誰かが、ゆっくりと拳を胸に当てたのだ。

 冒険者の敬礼。

 それは、英雄に捧げる最高の礼。

 生還を祈り、武運を祈る、魂の礼。

 カツン、カツンと、敬礼の波が広がっていく。

 さっきまで嗤い、罵声を浴びせていた者が今、拳を胸に当て、頭を垂れている。

 他人を蹴落とすことしか考えていなかった者たちが、今、若き戦士たちに魂の敬礼を捧げている。

 それは、死地へ向かう若者たちへの(はなむけ)であり、自分たちが失った勇気への、哀悼でもあった。

 ギルドホールは、静寂に包まれていた。

 何も言わず、ただ窓の外を見つめている。

 五人の姿が朝日に照らされ、金色に輝いていた。

 その光景が、網膜に焼き付いて離れない。

 やがて、五人の姿が避難者の群れの向こうに消えていく。

 それでも、冒険者たちは敬礼を解かなかった。

 見えなくなっても、まだ。


       ◇


「泣き虫リーダー! ふふっ」

 エリナが、くすくすと笑いながらレオンの肩を小突いた。

 その黒曜石のような瞳に、悪戯っぽい光が踊っている。

「うっせぇ!」

 レオンが、涙の跡を慌てて擦りながら怒鳴った。

 手の甲でゴシゴシと頬を擦る。

 その必死な様子が、また少女たちの笑いを誘った。

「あははっ、レオン、顔真っ赤!」

「うふふ、可愛らしいですわね」

「リーダーなのに泣き虫なんだから!」

「ボクより子供みたいだね」

 四人の笑い声が、朝の空気に溶けていく。

 レオンは、ムスッとしながらも、内心では嬉しかった。

 こうやって、からかわれることが。

 こうやって、笑い合えることが。

 カインたちといた頃には、こんな瞬間はなかったのだ。

「でも」

 エリナの声が、少しだけトーンを落とした。

 その頬が、朝焼けのようにほんのり染まっている。

 視線を逸らしながら、小さく呟く。

「悪くない」

 たった一言。

 でも、その一言に込められた温もりが、レオンの胸を熱くした。

 心を開くことをずっと恐れてきたエリナにとって、それは精一杯の言葉だった。

 ミーシャが、優雅な仕草で金髪をかき上げた。

 空色の瞳を細めて、微笑む。

「うふふ、素敵な涙でしたわ」

 聖女の、完璧な微笑み。

 でも、その瞳の奥に、何かが揺れている。

「本音を言えば、私も少し……」

 言葉が、途切れた。

 聖女の完璧な微笑みに一瞬、本物の感情のひびが走り、慌てて取り繕った。

「あたしも、ちょっと泣いちゃった」

 ルナが、真っ赤に腫れた目を袖でごしごしと擦った。

 仲間たちと一緒なら、自分の力を信じられる。

 そう思える自分がいた。

「ボクも……ちょっとだけね」

 シエルが、銀髪で顔を隠しながら呟いた。

 消え入りそうな、小さな声。

 男装の凛々しさはどこへやら、その仕草は完全に乙女だった。

 政略結婚の道具として扱われ、心を殺して生きてきた。

 それが今、初めて仲間のために震えている。

 五人は、自然と肩を並べて歩き始めた。

 城門へと向かって。

 石畳を踏む足音が、力強く響く。

 まるで、運命が刻むリズムのように。

 まるで、伝説の始まりを告げる鼓動のように。