「いいことを教えてあげよーう!」
シアンはニヤッと笑って人差し指を立てた。その碧い瞳が悪戯っぽく、けれどどこか優しく輝いている。
「答えはここにあんのよ」
そう言って、パンとレオンの胸を叩いた。
「痛てっ! こ、ここ……に?」
レオンは叩かれた胸を押さえながら、困惑した顔でシアンを見た。
「そう。頭でっかちに考えるから見えなくなんのよ。答えは常に心の奥底にあるわ」
シアンの声はいつになく真剣だった。悪戯っぽい笑みの奥に深い叡智が垣間見える。全知全能の熾天使が、たった一人の人間に真理のカケラを教えようとしている。
「心の……奥……」
一瞬、レオンはどういうことか困惑した。心の奥底? そこに答えがある? けれどそんなもの、どうやって。
その時、胸の奥で何かが疼いた。『誰もが笑顔で暮らせる世界』、その温かなイメージがブワっと湧き上がってきた。温かな光の中、みんなが幸せそうに手を取り合い、楽しそうに笑っている風景。それはまるでアルカナのメンバーたちのように、温かな信頼に結ばれた世界。彼女たちと過ごした日々が走馬灯のように駆け巡る。
そうだ。理屈で自由とか平等とか枠組みを決めただけでは、本質的には解決しないのだ。
この世界は人間の世界。そして人間は心の生き物。自然と心が温かく結ばれるようになる、優しさの溢れた世界にしなくてはならない。
不安も脅威もなく、誰もが夢や理想を追い求められる社会。
失敗しても何度でもやり直せる温かな世界。そう、これが理想なんだ。
だが、そんな世界の作り方など分からない。分かりようがない。自分はただの若い男だ。政治も経済も社会制度も、何一つ学んだことがない。
では、何を願うか?
答えはシンプルだった。この想いを形にすることを手伝ってくれる人だ。自分に分からなければ、分かる人に手伝ってもらえばいいだけなのだ。一人で抱え込む必要など、どこにもない。
レオンは頷くと顔を上げ、シアンをまっすぐに見つめた。その翠色の瞳に確かな決意の光が宿っている。
「メンターを……導いてくれるアドバイザーを、紹介してください」
「ははっ。そう来たか」
シアンは嬉しそうに目を細めた。
「まぁ、それが正解だよね。いいよ? ふふっ」
その言葉にはどこか誇らしげな響きがあった。まるで教え子が正解を出したことを喜ぶ師のように。
レオンは『正解』という言葉にホッとした。「頑張ります」とか言っていたらきっと叩かれていただろう。周りに頼る、これはアルカナのみんなが教えてくれた大切なことだった。
シアンは嬉しそうに笑うと、ツーっと指先で宙に切れ目を入れていく。何もない空中に銀色の線が走る。まるで空間そのものを切り裂いているかのように。
「……え?」
その不思議な操作にレオンは眉をひそめた。一体何をしているのだろう。
直後――。
「わたーーっ!! なんじゃこりゃぁ!!」
その切れ目から金髪おかっぱの少女がこぼれ落ちて床に転がった。ゴロゴロと二回転ほど。そして勢いよく起き上がる。
「誰じゃ! こんなんするんわ!! 我を誰だと思っとる!!」
ポテトチップスの袋を持ちながら、へたったユニクロのフリースに身を包んだ少女。女子中学生のような幼い容姿だが、その緋色の瞳にはどこか底知れない光が宿っている。彼女は憤りに満ちた表情で辺りをキョロキョロと見回した。
「やぁ、レヴィア。ポテチは美味いかい? くふふふ……」
シアンは楽しそうに笑った。
シアンの方を振り向いた瞬間、少女の表情が凍りついた。
「こっ、こ、これはこれはシアン様……ご無沙汰しております……」
レヴィアと呼ばれた少女はシアンを一目見ると、急に小さくなってこうべを垂れた。先ほどまでの威勢はどこへやら。まるで暴君の前で縮こまる部下のようだった。
「キミに頼んどいた仕事、アレ、どうなってる? ん?」
シアンの声が少しだけ低くなった。碧い瞳がじっとレヴィアを見下ろしている。
「あ、いや、その、今、とても忙しくてですね……」
「『今期のアニメは豊作じゃ』って声がどこかから聞こえてきた気がするんだけど?」
「あ、いや、その、それはですね……」
レヴィアは冷や汗をたらたらと流しながら、しどろもどろになった。その姿は言い訳を考えつかない子供のようである。
「まぁ、いいよ」
シアンはフッと表情を緩めた。
「でさ、こいつが夢あるんだって。叶えてあげて」
そう言ってレオンをレヴィアの前にぐいっと引き寄せる。よろめきながら一歩前に出るレオン。
「……は?」
レヴィアは怪訝そうにレオンを見つめた。緋色の瞳が値踏みするように上から下まで眺める。その視線にはあまり好意的な色は含まれていなかった。
「で、どんな夢だって? ほら、説明して」
シアンに促されレオンは唾をのんだ。緊張で喉がカラカラに乾いている。
「あ、えーと……。『誰もが笑顔で暮らせる世界』を作りたいなって……」
気恥ずかしい想いを押し殺して絞り出すように言ったが、レヴィアはポカンとしている。
シアンはニヤッと笑って人差し指を立てた。その碧い瞳が悪戯っぽく、けれどどこか優しく輝いている。
「答えはここにあんのよ」
そう言って、パンとレオンの胸を叩いた。
「痛てっ! こ、ここ……に?」
レオンは叩かれた胸を押さえながら、困惑した顔でシアンを見た。
「そう。頭でっかちに考えるから見えなくなんのよ。答えは常に心の奥底にあるわ」
シアンの声はいつになく真剣だった。悪戯っぽい笑みの奥に深い叡智が垣間見える。全知全能の熾天使が、たった一人の人間に真理のカケラを教えようとしている。
「心の……奥……」
一瞬、レオンはどういうことか困惑した。心の奥底? そこに答えがある? けれどそんなもの、どうやって。
その時、胸の奥で何かが疼いた。『誰もが笑顔で暮らせる世界』、その温かなイメージがブワっと湧き上がってきた。温かな光の中、みんなが幸せそうに手を取り合い、楽しそうに笑っている風景。それはまるでアルカナのメンバーたちのように、温かな信頼に結ばれた世界。彼女たちと過ごした日々が走馬灯のように駆け巡る。
そうだ。理屈で自由とか平等とか枠組みを決めただけでは、本質的には解決しないのだ。
この世界は人間の世界。そして人間は心の生き物。自然と心が温かく結ばれるようになる、優しさの溢れた世界にしなくてはならない。
不安も脅威もなく、誰もが夢や理想を追い求められる社会。
失敗しても何度でもやり直せる温かな世界。そう、これが理想なんだ。
だが、そんな世界の作り方など分からない。分かりようがない。自分はただの若い男だ。政治も経済も社会制度も、何一つ学んだことがない。
では、何を願うか?
答えはシンプルだった。この想いを形にすることを手伝ってくれる人だ。自分に分からなければ、分かる人に手伝ってもらえばいいだけなのだ。一人で抱え込む必要など、どこにもない。
レオンは頷くと顔を上げ、シアンをまっすぐに見つめた。その翠色の瞳に確かな決意の光が宿っている。
「メンターを……導いてくれるアドバイザーを、紹介してください」
「ははっ。そう来たか」
シアンは嬉しそうに目を細めた。
「まぁ、それが正解だよね。いいよ? ふふっ」
その言葉にはどこか誇らしげな響きがあった。まるで教え子が正解を出したことを喜ぶ師のように。
レオンは『正解』という言葉にホッとした。「頑張ります」とか言っていたらきっと叩かれていただろう。周りに頼る、これはアルカナのみんなが教えてくれた大切なことだった。
シアンは嬉しそうに笑うと、ツーっと指先で宙に切れ目を入れていく。何もない空中に銀色の線が走る。まるで空間そのものを切り裂いているかのように。
「……え?」
その不思議な操作にレオンは眉をひそめた。一体何をしているのだろう。
直後――。
「わたーーっ!! なんじゃこりゃぁ!!」
その切れ目から金髪おかっぱの少女がこぼれ落ちて床に転がった。ゴロゴロと二回転ほど。そして勢いよく起き上がる。
「誰じゃ! こんなんするんわ!! 我を誰だと思っとる!!」
ポテトチップスの袋を持ちながら、へたったユニクロのフリースに身を包んだ少女。女子中学生のような幼い容姿だが、その緋色の瞳にはどこか底知れない光が宿っている。彼女は憤りに満ちた表情で辺りをキョロキョロと見回した。
「やぁ、レヴィア。ポテチは美味いかい? くふふふ……」
シアンは楽しそうに笑った。
シアンの方を振り向いた瞬間、少女の表情が凍りついた。
「こっ、こ、これはこれはシアン様……ご無沙汰しております……」
レヴィアと呼ばれた少女はシアンを一目見ると、急に小さくなってこうべを垂れた。先ほどまでの威勢はどこへやら。まるで暴君の前で縮こまる部下のようだった。
「キミに頼んどいた仕事、アレ、どうなってる? ん?」
シアンの声が少しだけ低くなった。碧い瞳がじっとレヴィアを見下ろしている。
「あ、いや、その、今、とても忙しくてですね……」
「『今期のアニメは豊作じゃ』って声がどこかから聞こえてきた気がするんだけど?」
「あ、いや、その、それはですね……」
レヴィアは冷や汗をたらたらと流しながら、しどろもどろになった。その姿は言い訳を考えつかない子供のようである。
「まぁ、いいよ」
シアンはフッと表情を緩めた。
「でさ、こいつが夢あるんだって。叶えてあげて」
そう言ってレオンをレヴィアの前にぐいっと引き寄せる。よろめきながら一歩前に出るレオン。
「……は?」
レヴィアは怪訝そうにレオンを見つめた。緋色の瞳が値踏みするように上から下まで眺める。その視線にはあまり好意的な色は含まれていなかった。
「で、どんな夢だって? ほら、説明して」
シアンに促されレオンは唾をのんだ。緊張で喉がカラカラに乾いている。
「あ、えーと……。『誰もが笑顔で暮らせる世界』を作りたいなって……」
気恥ずかしい想いを押し殺して絞り出すように言ったが、レヴィアはポカンとしている。



