【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 パキパキパキパキ……!

 クレーターの底が青く輝くスケートリンクのように変わっていく。それは死の大地に生まれた奇跡の宝石だった。

 女性は結晶化した湖面の上に優雅に降り立つ――コツン、と小さな音が響く。

熾天使(セラフ)だ……」

 レオンは呻くように呟いた。イザベラが未来視して実現させようとしていた熾天使(セラフ)の降臨。超常の力でこの大陸を焼くという狂気の計画。イザベラを倒せたからキャンセルできていたものだとばかり思っていたが、そうではなかったらしい。

「ま、まずい……。くっ……」

 レオンはキュッと口を結んだ。

 熾天使(セラフ)はゆっくりと辺りを見回し、やがてその碧い瞳が崖の上に立つ五人を捉えた。刹那、彼女はニヤリと楽しげに笑う。それは面白いおもちゃを見つけた子供のような、無邪気で、残酷で、どこまでも純粋な笑顔だった。

「見ぃつけた」

 声が響いた。どこか甘く、どこか冷たく、どこまでも楽しげな声。彼女は優雅に腕を振る。まるで旧友を招くかのように軽やかに。

 次の瞬間。

「えっ……!?」「きゃっ!?」「なっ……!?」「ひゃっ!?」「うわっ!?」

 世界が(ねじ)れた。視界が歪み、空間が折り畳まれ、上下左右がぐるりと回転する。胃の底から何かがせり上がってくるような激しい浮遊感。そして気がつけば、五人は彼女の目の前に立っていた。青い結晶の湖面の上、神に連なる者のすぐ傍らに。

 熾天使(セラフ)は悪戯っぽくニヤリと笑った。

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! ってね。ふふっ」

 彼女はまるでファッションモデルのように腰をひねってポーズを作った。青い髪が揺れて光の微粒子を散らし、銀色のボディスーツが光を反射する。そしてニコッと笑うと、その碧い瞳がまるで獲物を品定めするかのように五人を見渡した。

「僕を呼んだのはキミたちだね? さぁ、どこをふっ飛ばすんだい? この大陸全部焼いちゃおうか? くふふふ……」

 その声は鈴を転がすように美しく、けれどその内容は背筋が凍るほど物騒だった。大陸を焼く。まるで庭の雑草を抜くかのような気軽さで、彼女はそう言ったのだ。

 レオンは自分の足が震えているのを感じた。目の前にいるのは人間ではない。神話の中の存在。世界を創り、世界を壊す、絶対的な力を持つ者。そんな存在が今、自分たちの目の前で楽しげに微笑んでいる。それは夢のようで、けれど紛れもない現実だった。

「あ、あなたが熾天使(セラフ)……様ですか?」

 レオンは恐る恐る口を開いた。声が震えている。膝が笑っている。目の前の存在が放つ威圧感に、身体が本能的に(すく)み上がっていた。

「そうよ?」

 熾天使(セラフ)は腕を組んで誇らしげに胸を張った。銀色のボディスーツが煌びやかに光を反射する。

「女神さまに言われてこの世界を創った熾天使(セラフ)のシアンだよ。十万もの命を捧げられたら、しょーがないよね。願いを叶えてあげるわ」

 世界を、創った。その言葉の重みにレオンは眩暈を覚えた。目の前にいるのは神話の中の存在。この大地を、この空を、この世界のすべてを創り上げた創造主の使い。人間など塵芥に等しい存在に違いなかった。


       ◇


「で? どこを焼くんだって?」

 シアンは楽しげに首を傾げた。まるで今日の夕食は何にしようかとでも聞くかのような気軽さで。

 レオンの背中を冷たい汗が流れ落ちる。

 十万の命。それはレオンたちが滅ぼした魔物の数だ。

 イザベラは、魔物たちに街を襲わせ、そこで殺した人間の命を(にえ)として熾天使(セラフ)を呼び出し、世界を火の海に沈めるつもりだった。イザベラの計画は阻止できたのだが――皮肉なことに、レオンが滅ぼした魔物たちが贄となってしまっていた。結果として彼女の術式は完成し、熾天使(セラフ)が降臨してしまったのだ。運命の皮肉に、レオンは歯噛みした。

「せ、熾天使(セラフ)様ということは、女神様に仕える執行者……ということですか?」

 レオンは必死に情報を集めようとした。相手を知らなければ、対処のしようがない。

「そうそう、女神さまのお手伝いをするお仕事。女神さまったら歌ってばかりで自分は仕事してくんないのよねぇ……」

 シアンはムッとした様子で肩をすくめる。

 どうやら天界には天界なりの事情があるようだ。

「お疲れ様です。それで女神さまの代わりに世界を創造したりされているんですね」

「そうそう。ただ、僕は創るより壊すことの方が多いかな? 天界のぶっ壊し屋だよ。きゃははは!」

 シアンは無邪気に笑った。その笑顔は純粋で可憐で、けれどその言葉の意味はあまりにも恐ろしかった。天界のぶっ壊し屋。つまり女神の命令で世界を破壊する存在。星を砕き、大陸を焼き、文明を灰燼に帰す終末の使者。そんなとんでもない存在が今、目の前に立っているのだ。しかも楽しそうに笑いながら。

 レオンは頭の中が真っ白になりそうだった。どうすればいい。何を言えばいい。こんな存在を相手に、いったい何ができるというのか。

「と、とりあえず……」

 レオンは震える声を絞り出した。

「スタンピードは滅ぼしましたので、頼むことはもうなくなってしまいました……のですが……」

 沈黙が落ちた。空気が凍りつき、シアンの笑顔がゆっくりと消えていく。