【SS集】クリスマスに甘い恋を。



 思い出したらまだちょっとイライラするな。

 舌打ちでもしたい気分でいると、目を丸くして、ポカンと口を開けていた朝陽が、とうとつに うしろを向いた。

 きょとんとして背中をながめていれば、朝陽はミニテーブルのカバーを開けて、紙コップをひとつ、新たに持ち上げる。




「はい、あーん」


「えっ。ちょ、ちょっと、なに!?」




 そして、振り向きざまに、フォークを持って私の口元へとケーキを差し出した。

 その顔は真剣そのもの。




「いいから、ほら。あーん」


「し、試食ならさっき食べたって…!」




 ズリ、と半歩あとずさっても、朝陽は距離を詰めてケーキを差し出し続ける。

 まったくひっこめる気配がないのを、しばらく見つめ合って悟ると、私は渋々、口を開けた。

 じわじわとほおが熱くなるなか、朝陽の手で口の中に運ばれたケーキを、もぐ、と食べる。