「気分がわるいときこそ、“おいしいもの”だよ。一口だけでも食べてみて、きっと元気が出るから」
私の目をのぞきこんで、ニコッと笑う顔は、まるでいつでも明るい太陽みたい。
イライラとかの、負の感情とは無縁そうな男子だと、勝手に偏見を持った。
でも、“気分がわるいときこそ、おいしいもの”か…。
たしかに、ケーキを食べたらこのイライラも、すこしは やわらぐかも。
「…わかった。じゃあ、一口だけ」
「うん!待ってて、今出すから」
明るく笑ったイケメン男子は、ミニテーブルに近づいて透明なカバーを開ける。
お店の出入り口に近いところで立ち食いしてるのも迷惑だから、私もすこし彼のほうに近づいた。
奥にあった紙コップをひとつ、器用に持ち上げたイケメン男子は、くるりと振り返って「はい」と私に差し出す。



