【SS集】クリスマスに甘い恋を。



 やっぱり夜久先輩はひょうひょうとしているから、その言葉が本当なのか、うたがう気持ちもすこしだけある。

 だってわたしは、声が出せないほどドキドキしているのに。

 夜久先輩はいつもどおりの笑顔で、わたしをまっすぐに見つめていた。




「いい?」




 ささやくように聞かれて、わたしはやっとの思いで、あごをすこしだけ引いた。

 それがちゃんと、肯定の気持ちだって伝わったのか、夜久先輩はもう一度、今度はわたしのほおにキスをする。




「や…やく、せんぱい…っ」


「名前で呼ばれたら、名前で呼ぶのが礼儀じゃない?星乃」


「~~っ…」




 ぜんぜん言いたいことが言えないのに、そんな要求をされても。

 わたしは、はく、と口を動かして、声をしぼり出すように、先輩の名前を呼んだ。