屈託なく笑う夜久先輩の声が、耳をくすぐるみたいにひびいた。
心臓がバックンバックン音を立てている。
「顔熱いよ、伊月。そんなにうれしい?両想いで」
夜久先輩が一歩近づいて顔を寄せてくるから、わたしは「あわわわっ」と最後の言葉を聞き流しそうになった。
「ち、近いですっ、夜久先輩…っ!…へ?両、想い…?」
楽しむように笑みをたたえている夜久先輩の顔を見つめながら、時間をかけて、その言葉を処理する。
両想い。それはまちがってない。まちがってないんだけど…。
「な、な、な、なんでっ!?」
「ははっ、いいリアクションするなぁ」
さわやかに笑っている夜久先輩がちょっと憎たらしく思えるくらい、わたしの頭は混乱でいっぱい。
なんでわたしが夜久先輩のこと好きなの、バレてるの!?
好きなんて一言も言ってないはずなのに!



