「あのぉ、夜久先輩。先生は…?」
「あぁ、来ないよ。話してないし」
「えっ!?そ、そんな、それじゃあ無断侵入になるんじゃ!?」
「まぁ、そういうこと。ちゃんとお口チャックしてるんだよ?」
夜久先輩は口の前に人差し指を立てて、イタズラな笑みを浮かべる。
まさか顧問の先生にひみつで、天体観測をするなんて…。
わるいことをしているドキドキと、正真正銘、夜久先輩と2人っきりということに対するドキドキが混じって、鼓動がせわしなかった。
「…ん、よく見える。ほら、伊月」
望遠鏡をのぞきこんだ夜久先輩が顔を上げて、わたしを手招きする。
わたしは「ひゃ、はいっ」と上擦った返事をして、右手と右足を一緒に出しながら夜久先輩に近づいた。
位置を代わって、望遠鏡をのぞきこむと、きらめく星がいくつも見える。



