「それでも、わたし…天文部に いつづけたいです。夜久先輩との思い出を、夜久先輩の存在を、残したいから」
「…」
しずかな、しずかな沈黙が落ちた。
呼吸の音すら大きく聞こえそうな静寂のなかで、夜久先輩がぽつりと声を落とす。
「伊月、24日空いてる?」
「…え?あ、はい、空いてます、けど…」
なんでとつぜん?と、思わず顔を上げて夜久先輩を見た。
夜久先輩は、いつもどおりのひょうひょうとした笑みを浮かべて、私に言う。
「じゃ、観測会しようか。最後の思い出に」
その言葉を聞いて、私は目を丸くした。
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12月24日。世のなかはクリスマスイブで盛り上がっている。
でも、わたしはその夜に、人気がない天笠高校の校庭で、夜久先輩と2人、望遠鏡をセットしていた。



