【SS集】クリスマスに甘い恋を。



 天笠(あまがさ)高校を受験したきっかけは、文化祭で見た天文部のプラネタリウムがきれいだったから。

 段ボールでできた小さなドームの天井に、たくさんの星が浮かんでいて。

 その星、ひとつひとつを解説していた、かっこいい男の人の低い声が、家に帰ってもしばらく耳に残っていた。


 だから、ね。

 天文部に入って、初めての文化祭で、あこがれの夜久(やく)先輩とプラネタリウムをおひろめできたこと、本当に本当にうれしかったんだ。




伊月(いづき)、天文部やめたら?」


「えっ。な、なんでですか、夜久先輩!?」




 文化祭のお祭りムードもすっかり思い出に変わった12月の中旬。

 いつもどおり、天文部の部室で、部長の夜久(やく)(ひかる)先輩と2人、のんびりおしゃべりをしていたときのこと。

 やわらかいブラウンに染めた髪を遊ばせている、ちょっとチャラい雰囲気(ふんいき)の夜久先輩は、とつぜん爆弾発言を落とした。