【SS集】クリスマスに甘い恋を。

 まだじんわりと温かいマグカップを持ち上げ、そっと口をつけると、体に染み渡るようなココアの甘さが舌に広がる。

 コクリと飲み(くだ)せば、体の内側も温まっていくようで。




「おいしいでしょ?ここのココアは、僕のお気に入りだから」


「あ…はい。おいしい、です」




 みんなと言い合いをしていたはずの瑠唯さんに声をかけられて、びっくりしつつ、顔を上げた。

 瑠唯さんはゆるくほほえんで、また、ポンポンと私の頭をなでる。

 じゅわりとほおに にじんだ熱の正体は、なんなのか。


 瑠唯さんに拾われた私の未来も、このココアのように、甘くて、温かいのかもしれない。

 そんなことを、今度は“パーティーを始めよう”とにぎやかになっていく みんなのようすをながめながら、私は一人で思った。




「おいで、稚奈。一緒にケーキ食べよ」




 振り向いてほほえむ瑠唯さんの顔に、やわらかい光が降りそそいでいる。

 私は「はい…っ」と答えて、光り輝くその人の元へ、かけ寄った。




fin.