【SS集】クリスマスに甘い恋を。

 “音無総長”…金髪の人にも、総長って呼ばれてたよね。

 ここにいる不良の人たちの、リーダー…みたいな存在なのかな。


 “音無”さんに貸してもらったフリースを肩にかけながら、私はチラリと、対面をうかがった。

 総長と呼ばれている彼は…マグカップを持ち上げて、コクコクとココアを飲んでいる。




「…で、なにしてたの?あんなとこで、そんな格好(かっこう)で」


「え、と…」




 マグカップをテーブルに置いて、音無さんは眠そうに見えるたれ目を私に向けた。

 思わず言葉に詰まり、体を(ちぢ)めながらうつむく。

 しん、と痛いほどの沈黙(ちんもく)が店内を満たして、私を()すようだった。




「…僕ね、人に待たされるのきらいだから。このココアを飲み終わるまでだよ、きみのこと待ってあげられるの」