【SS集】クリスマスに甘い恋を。



 早く、早くどこかへ行かなきゃ。

 そう思うのに、のろのろと体を起こすのがやっとで。

 ようやく地面に座りなおしたとき、頭上からなにか温かいものが降ってきた。




「っ…?」


「それ、羽織(はお)っておきな。上着ないと寒いでしょ」


「え…」




 頭にひっかかったそれに触れると、もこもこしたやさしい感触が返ってくる。

 肩や背中がほわっと温かくなるのを感じながら、頭上の窓を見上げれば、あの人が変わらず私を見下ろしていた。

 上着を、貸してくれたの…?




「おわ、まじでなんかいる。…あー、うちの総長の命令だから、ちょっとついてきてくれるか?あんた」


「あ、えっと、その…ご、ごめんなさい、ご迷惑(めいわく)をかけるつもりでは…」