【SS集】クリスマスに甘い恋を。

 ここにいてはいけない。

 その一念に突き動かされて、私はクリスマスイブの夜、寒空の下へ歩き出した。




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「はー…」




 適当に歩いてたどり着いた人気(ひとけ)のない路地裏で、かじかむ指先に何度目かの吐息(といき)を吹きかける。

 しゃがみこんでひざを(かか)えても、こうやって息を吹きかけても、体はガタガタとふるえるばかり。

 お父さんに殺されなくても、私、ここで(こご)え死んじゃうのかな…。


 (きり)がかかるように湧いてきた眠気に、まぶたが負けそうになる。

 うつらうつらと、目を閉じかけたとき――。




「はぁ、やっと息ができる…」




 とつぜん、頭上から男子の声が降ってきた。




「っ、え…?」