こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜冷徹ライバルからの理不尽な政略結婚は、22年分の重すぎる独占欲のせいでした〜

 今日帰るなら帰るって言ってよ!
 連絡先は交換していないけれど。

「ハルカ、知り合いか?」
「あー、う、うん。そう」
 浮気をしているわけではないのに、どうしてこんな気まずい感じに?
 なんで隼人と佐久間が睨み合っているの?

「おい、帰るぞ」
 乗れと顔で合図する隼人の向こうには黒塗りの高級車が止まり、運転席には秘書の田沼の姿が見えた。
 車がピカピカすぎますよ、田沼さん。

「佐久間、アプリの話はまた来週ね」
 ごめんねと遥は佐久間の背中をポンと叩く。

「ハルカ、待てって」
 腕を掴まれた遥は、佐久間にグイッと引き寄せられた。

「大丈夫なのかよ。なんかヤバいんだったら」
「大丈夫、大丈夫。ごめん、今日彼と約束してたの忘れてた」
 小声で話した遥は、ほんとにごめんねと佐久間に伝え、隼人のもとへ。
 
「おかえりなさい。今日帰ってくるって知らな……」
「マンションに帰らず、毎日あいつと浮気してたってわけか」
「……は?」
 確かにマンションには帰らず実家の片づけをしていたけれど、そんな言い方ってある?
 しかも佐久間と浮気なんて。
 仕事の話をするだけなのに!

「融資はもう必要ないのか?」
 遥の肩を抱き寄せ、耳元で囁くように脅してくる隼人を遥は見上げる。

「浮気じゃないってば!」
 なんで私が言い訳しなきゃいけないのよ!
 なんなのよ、急に帰ってきて!
 文句を言ってやりたいが、融資のために我慢しないといけない。
 結局遥は何も言えないまま、ピカピカの黒塗り高級車に乗り、隼人と一緒にマンションへ戻った。

 マンションに戻った遥は、玄関を入ってすぐの電子ボードに『金曜の夕方に帰る』という文字が表示されていることに気が付いた。
 飛行機の離発着時間と航空会社名まで。

「ごめんなさ……」
「いや、行く前に話さなかった俺が悪い」
 引越して仕事に行って、食事で酔っ払って泣き喚いて、昼まで寝ていた私に説明する時間なんてなかったよね?
 イヤミですか。

「えっと、今さらだけれど使い方を聞いても?」
「これはうちの会社が開発したスマホアプリからメッセージが送れる電子ボードだ」
 隼人はスマートフォンをポケットから取り出すと、アプリを起動する。
 画面はとてもシンプルで「読む」「書く」「設定」しかない。
 
 隼人は「書く」を選び、文字を打ち込んでいく。
 送信を押すと、遥の目の前にある電子ボードに「ただいま」の文字が浮かび上がった。