こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜

 動画広告を見ると1回いくらと決められた広告料がツクモソフトに支払われる。
 同時に、運営会社であるMMACにも。
 つまり、隼人はリスクもなく簡単にお金を手に入れることができるのだ。

「だから協力的だったのね」
 感謝して損したと遥は肩をすくめる。
 
「婚約者にそこまで興味がないとは思わなかった」
 他にもいくつか会社があるから気をつけろと冗談交じりに隼人は笑う。

「Mから始まる会社には注意するわ」
「Hから始まる会社もあるぞ」
「いったいいくつ会社があるのよ!」
 私はツクモソフトひとつでこんなに大変なのに。
 なんなの、この差は。

「そうだ。8月10日の夜、空けておいてくれ」
「日曜日だし、別に予定はないけれど?」
「ディナークルーズに行く」
「ディナークルーズ……」
 隼人の言葉に遥は眉間に皺を寄せた。
 ディナークルーズという言葉を聞くのは今日2度目だ。
 
「お嬢様と行く前の下見?」
 8月15日の花火大会の日に伊集院製薬のお嬢様と行くから、きっと私で練習したいんだよね。
 どんな設備なのか、どんな景色が見えるのか。
 そしてスマートにエスコートするのだろう。
 勝手に想像を膨らませた遥は怒りながら席を立った。

「ごちそうさま」
「なんで怒って」
「怒ってない!」
「どうみても怒って……」
「ちゃんと行くわよ! そういう契約なんだから!」
 遥はテーブルの上にあったシャルドネの白ワインの瓶を奪い、部屋に逃げ込んだ。
 
『公の場ではパートナーとして仲睦まじい様子を演じること』
 ちゃんと行くし、現地ではちゃんと演じてみせる。
 イライラするのは仕方がない。
 誰だってイラつくでしょ。
 
「あ、ワイングラス忘れた」
 せっかくやけ酒用にワインを奪ってきたのに。
 遥は今朝、水を飲むのに使用したロックグラスにワインを注ぎ、部屋から贅沢な夜景を眺めた。