悪意を香る調香師は、氷の社長に溺愛される

マンションに戻った私は、調香室にこもった。
「何を作る?」
「全ての悪意を浄化する香水。『Purify』」
私はこれまで浴びてきた全ての悪意を思い出す。母の拒絶、同僚の嫉妬、西園寺の執着、ネット民の憎悪。
それら全てを香料に置き換えていく。
トップはベルガモット(苦しみの記憶)。ミドルはローズ(痛みを経た美しさ)。ラストはムスク(永遠の浄化)。
徹夜で作業する私のそばに、蓮がずっといる。無言でコーヒーを差し出し、時折肩を揉む。
三日後、『Purify』が完成した。
蓮がムエットに染み込ませ、深く吸い込む。
彼の目に涙。
「美しい。まるでお前の魂そのものだ」
「この香水を世界に発表する」
「でも私は……」
「大丈夫。俺がそばにいる」
発表会は一週間後、一流ホテルで開催決定。
もう逃げない。私の香水で世界を変える。