悪意を香る調香師は、氷の社長に溺愛される

西園寺がドアを蹴破り侵入してくる。
「君は僕のものだ。他の男に触れさせるくらいなら、壊してやる」
私から最大の悪意――殺意に近い執着が漂う。
恐怖で動けない。
その時、蓮の言葉が蘇った。
「お前の能力は、醜いものを美しく変える錬金術だ」
私は目を閉じて西園寺の悪意を分析する。
劣等感、孤独、愛されたことがない悲しみ。
「あなたは本当は寂しかっただけなんですね」
西園寺が動揺する。
「でもそれを歪んだ形でしか表現できなかった。哀れな人」
その時、蔵の扉が開いた。
「澪!」
蓮が駆けつけた。橘秘書と警備員も同行している。
西園寺は確保された。
蓮は私を抱きしめる。
「もう離さない」
「ごめんなさい……」
「馬鹿。迷惑なのはお前がいないことだ」
蓮が私の唇を塞ぐ。初めてのキス。
「愛している。契約じゃない。本当に愛している」
私は初めて心から笑顔になった。
「私も……愛してます」