夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 様々な戦術や陰謀の飛び回る時代だ。


 誠実な青年であった彼女の夫は部下に騙されて、裏切られた。

 不意打ちにあって、殺された。


 一帯が血の海になるような、地獄絵図。



 屋敷で待つ彼女の下には、遺体すらも戻らなかったという。敵陣に、その首だけが届けられた。



 彼女は取り乱した。
 我を忘れて怒った。


 そのあまりの態度と変わりように、周囲の人々は泣く泣く彼女を実家で療養させることにした。




 彼女の実家である神社の裏山には、様々な縁をもたらす妖が棲んでいた。


 その中で最も強いものが見るに耐えない気持ちを覚え、彼女に手を差し伸べた。

 妖は、「悪夢」を晴らう技術を教えた。


 そして、彼女は生家の神社で巫女として働くようになった。


 
 彼女は、夫を殺された怒りと復讐心と色々な感情を抱えたまま、人々の心の傷を晴らうようになったそうだ。



 歴代の巫女たちが、組紐を組むことを得意としたため、その巫女は結女(ゆうめ)と呼ばれるようになった。


 時代が流れ、今ではその存在は夢宮と呼ばれている。



 そして、彼女の後を継ぐ誰ひとりとして、彼女ほど強い悪夢を晴らえないと言われているそうだ。