夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー


 …俺が聞いてもいい話なのか。

 聞く資格なんて持ち合わせているのか。


 でももし、それが夕芽に関係あるなら。



 俺は、迷わず足を踏み入れてしまうのだ。

 
「お前さんが夢宮のお嬢さんを好いているなら、知っておいた方がよかろう」


 小花衣神社の「夢宮」は悪夢を晴らう巫女。


 その歴史は、なんと戦国時代にまで遡るそうだ。

 

 始まりは由緒正しい家に生まれた、1人のお嬢様。

 親が神主を務めていたりと人とは違うこともあったが、それ以外はごく普通の娘。

 
 好奇心旺盛で、ころころと表情を変える純粋な少女だったと伝えられている。

 彼女は他の年頃の娘たちと同じように、ある武士の下に嫁ぐことになった。



 その武士は非常に穏やかな性格で、彼女のことを丁重に扱った。

 いつしか彼女は、夫に心を寄せるようになった。



 家臣たちからの信頼も厚く、義両親とも仲が良い。

 生まれた子供たちも、素直で可愛らしい。


 この世にある、些細な幸せを全て集めたかのような幸福が続いた。


 
 …だけど幸せな日々は儚いもので、やがて大きな戦が始まった。