夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー


 だって私なら、絶対に他人には渡さないと思うから。

 何年だろうが、大事に仕舞っておくと思うから。


 
 だけど、目の前の渡辺さんは平然とした表情を浮かべている。

 

 ………なんで、私に?


「兄がね、とある人を探してるんだって」
「どんな方ですか?私でよければ、お手伝い…」


 私は、誰かに懸命に探されるほどの人生は送っていない。


 渡辺という名字にも、心当たりがない。



 だから、その相手というのは、きっと私じゃない。


 どこか遠くの、見知らぬ誰かのことだ。