大事でも、帰れない。
現実はそう上手くいかないこともある。
そんなことを突きつけるほど弱くはなかったから、思ってもいない理想を話す。
私は夢宮だ。
悪夢を晴らうだけの夢宮だ。
心の傷には触れられるからと言って、最深部まで踏み込めるわけでもない。
他人の痛みを、100%感じられるはずもない。
「ありがとう、夢宮さん」
口先だけでどうしようもない私の言葉に、渡辺さんが深くお辞儀をして、フェルトのボールをきつく握りしめた。
そろそろ、帰る頃合いだろうか。
私も立ち上がろうとした時、思い出したように渡辺さんが声を上げる。



