夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 なのに変われない。


「今のままじゃ、進めないのは分かってるんだけどなぁ…」 
  
 
 そこまで口にして、ふと顔を上げる。



 ちょうど同じように顔を上げた少女と、目が合った。



 糸を縒っていたはずのその手。

 だけど、今度はなぜか針を構えていた。

 
 しかも裁縫用の針ではない。

 


 ……あんなの、どこから出してきたんだろう。


 
 
 僕が話している間も、大きい物音はしていなかったのに。

 
 
 何もない場所に、両手が伸ばされる。

 まるでそこに戸棚でもあるかのように、宙を開いた。


 ゆっくりと引き出された、少女の手にもまた、空気が乗せられている。



 その空気の塊…のようなものに、少女は容赦なく針を突き立てる。


 何度も、何度も。



 スピンドルに少し触れてから、またすぐに空気を刺す。


 
 もしもあれが風船だったなら、割れているんじゃないか。

 そう思うほどだった。
 

 声をかけられなかった。


 
 しばらくそれを繰り返しているうちに、だんだんとその塊が僕にも見えてきた。