夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 テニスは楽しい。

 先輩たちはみんな優しい。

 
 今の環境も充分、恵まれていると思う。


 
 でも、僕が望むものはそれじゃない。


 
 あの時、怪我さえしなければ。

 あの時、飛び込みさえしなければ。
 


 そんなことが頭をよぎるようになって、野球部は途中でやめた。

 僕が動けない間に、どんどん成長していく仲間を見たくなかったから。


 
 スポーツを変えても同じことを考えてしまって、あの時に縛られてばかりで、まだ思うような結果は出せていない。


『陸は上手いし、あとちょっと動けたらもう最強だって!』


 それはつまり、今の僕じゃ駄目だということ。

 捨て身の僕が評価されるということ。
 


 怪我を恐れたまま、僕らしくもない守備をして、それで認めてはもらえないのだろうか。