夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー


 正直に言って、見つからない気がしている。

 というか、僕は出会えるはずもないと思っている。



 でも、それが兄の最期の願いならば。

 僕は探し続けるしかない。

 
「表に出てしまっているトラウマを、心の奥底に沈めて、組み込んでいる──っていう感覚です」
「へぇ、トラウマを…」 
 

 相槌は打ってみるものの、その意味するところまでは辿りつけない。
 

 きっと、僕が理解できることではない。
 

 
 だからまた同じように、ありきたりな言葉を返す。

 
「歴代の夢宮には、スピンドルの代わりにレース編みをしていた人もいたみたいですよ」
「その人、すごい器用だったんだろうね」


 僕がそう言うと、少女は深く頷いて、スピンドルを左手に握る。
 

 その表情が今までで1番の笑顔で、この少女は夢宮という職業が好きなのだろうと思った。