夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー


 この子はカウンセラーじゃない。

 そっち方面を志望している友人もいたが、こんな眼差しはしていなかった。



 仕事内容も知らない。

 彼女の発言の意図も意味もよく分からない。

 

 だけど、この少女は夢宮なんだと思った。


「それでは、お話していただけますか?」
「…うん」
 

 そう切り出した少女の目の前には、スピンドルと組み台が並べられている。

 漆が鈍く光る、木製の黒いものだ。


 個人的に、ちょっとした思い入れがあったから、思わず声が出てしまった。

 
「スピンドル…?」
「はい。よくご存じですね」
「僕も持っていたから」


 兄に託された、スピンドル。


 僕は手芸だとかに興味があった訳でもないから、それを渡された時は不思議でならなかった。



 だけど、兄はとある人物に渡したいらしい。


 相手の名前も知らない。

 顔も分からない。


 居場所も分からない。

 職業も分からない。



 ……兄の、親友の妹だそうだ。
 情報はたったそれだけ。