夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 睨むと言ってもあまり気迫はない。

 私も、湊先輩も反応しなかったことが不満だったのか、石川先輩はジタバタと暴れ始めた。



 やっぱり危ないかもこの人。
 捕まえておいた方がいいですかね。


 目配せで湊先輩と合図をしていると、ふいに石川先輩の動きがピタリと止まる。

 
「ハッ! もしかして夕芽ちゃん、湊のこと好きなの!?」
「……え? い、いや、違いますよ?」


 私は──ちゃんと、なんでもないような顔ができているだろうか。


 湊先輩のことは、先輩として好きなだけ。



 それ以上の感情なんてない。

 一緒にいて、安心なんかしない。

 自分の奥底に眠る私を見てもらえたことが、嬉しかったりなんてしない。



 絶対に、好きじゃない。

 そもそも、資格がない。

 
「ほんとに〜ぃ?」
「──っ、誤解です!」