夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー


 大きくよろけた後に、どうにか体勢を整える。

 ……びっくりした。


「だいじょぶ?」


 悪びれずに手を差し伸べてきた相手に、大きくため息を吐いた。


 この調子だと、遠くない将来、また誰かに同じことをして、怪我でもさせていそうだ。

 
「急にぶつかったら危ないです、石川先輩」
「もー、アタシのことも名前で呼んでくれていいのに〜」


 今はそんな話はしていない。

 私が表情を変えずに諭しても、口を尖らせるだけ。

 
 拗ねた様子の石川先輩は、あろうことか私の肩を抱き寄せた。



 この。空気感で。


「ちょっ、困ります!」 
「えーん夕芽ちゃんが冷たぁ〜い」 


 私は真面目な話をしているつもりなのに、石川先輩はどこ吹く風。


 いつもこんな調子で、賑やかで、子供みたいな人。

 嫌いではないんだけど、考えが掴めないから、接し方は1番難しい先輩だ。



 もしも石川先輩が夢宮を頼る日があっても、私には上手いこと解決できる自信がない。

 
「夕芽ちゃんてば、ちゃっかり湊には懐いてるのに!」 


 悔しそうに石川先輩は、湊先輩を睨みつける。