夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 ミサキさんが遠ざかっていく。

 申し訳ない、とでも言うような表情を浮かべて。


 
 失った温度は、どこに持って行けば取り戻せるのだろう。

 どうしたら、温め直してもらえるのだろうか。

 
「お姉ちゃんが出来たみたいで、嬉しかったです」
「夕芽ちゃん……」


 もしも来世があるのなら、私は妹に生まれたい。

 そんな虚しい夢を想像することがある。



 歳の大して変わらない兄さんに、幼い頃から可愛がってもらうの。

 両親は優しくて、私たちをいつも優先してくれて。


 運動会は、家族全員でお母さんの作ったお弁当を食べる。

 そしてみんな手が温かくて、手を繋ぐと少し熱い。


 
 ミサキさんみたいなお姉ちゃんがいたら、もっと楽しいかもしれない。



 独りよがりで寂しい、私の夢。


 この世のものとは思えないような悲劇にも、頭がおかしくなりそうなほどの甘い毒にも塗り潰されたりしない。



 遠い、遠い、訪れることのない、そんな世界の話。