夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

「ありがとうっ、夕芽ちゃん!!」


 感動しちゃって、つい夕芽ちゃんに抱きつく。


 ぴたり、と彼女が固まるのが分かった。



 ……さすがにやりすぎちゃったかな。

 恩人とはいえ、今日会ったばかりの人に抱きつくなんて。本当にあたしは非常識だ。


「ご、ごめんね、急に……」
「…いえ」

 
 あたしよりも小さな夕芽ちゃんの体は、静かに震えていた。


 それでも、あたしが謝罪すると、変わらない笑みで微笑んでくれた。

 あたしの方が年上なのに、また気を遣わせちゃった……。


「お姉ちゃんが出来たみたいで、嬉しかったです」


 寂しそうな瞳をした夕芽ちゃんに手を振って、神社の鳥居をくぐる。


 その瞬間、ふっと現実に引き戻されたような感覚がした。



 帰りたくない。

 ──でも、戻りたい。


 だから、最後にもう一度だけ。


「……え?」

 
 名残り惜しむように振り返ったけど、夕芽ちゃんの姿は見当たらない。


 ただ、青々とした木の葉が、そよ風に吹かれているだけだった。