夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 ただ、触れているだけ。

 一切力はかかっていないのに、斬られたように痛い。


 ひんやりとした金属の感覚がしている場所から、どくどく、どくどくと、マグマみたいにどろりとした熱い血が、溢れ出ていく。
 


 濁流となるほどの血が出ているように感じたけど、床は赤には染まっておらず、木の色をしたままだった。



 一体、何なの……?


「夕芽ちゃん──?」


 あたしの目に映る夕芽ちゃんは、相変わらずの無機質な表情だ。でも、その瞳が静かに揺れていた。


 まるで、何かを探しているように。



 しばらく宙を彷徨ったのちに、夕芽ちゃんは口を開く。

 
「……私は、ミサキさんのこと、その、可愛いなって思いました」


 その言葉と同時に、刀が離れていく。