夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

「……お晴らい」
 

 本物の神社みたい。


 …まぁ、神社だから当然ではあるけど。



 夕芽ちゃんが何もないように見える壁を、手のひらで押す。

  
 すると、壁が横へスライドしていって、目の前に拝殿が現れた。



 ………え? どういうこと?



 不思議に思うあたしをよそに、夕芽ちゃんは拝殿の前で正座をする。
 

「──……」


 独特の言い回しで、夕芽ちゃんは真っ黒な紙をすらすらと読み上げていく。


 あたしにはなんて言っているかも分からないし、紙も真っ黒にしか見えない。

 でも、夕芽ちゃんには違うのかな。

 

 迷うことなく、祝詞を読むその目には、あたしには見えていない何かが見えている…?


 そう思って目を凝らしてみると、紙を染める黒が、少し──揺らいだ、ような気がした。